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口美庵 kuchimi-an ~シドニーゲイの日々

口美庵 kuchimi-an ~シドニーゲイの日々

vol, 9 「年明けカミングアウト」

口美日記vol, 9 「年明けカミングアウト」

新年のご挨拶がまだでした・・・。

遅ればせながら。
みなさま、あけましておめでとうございます。
長いお付き合いの方も、ここで出会ったあなたも、
2005年、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、大晦日の夜、旦那の社長宅に御呼ばれして行って参りました。いや、正確に言えば、私は呼ばれてはいなかった。社長はうちの旦那がゲイであることを知らなかったのだから。「お友達も呼んでらっしゃい」と軽く言ったのが運のツキ、新年早々社員からのカミングアウトである。さぞかしびっくりしたであろう。「実は僕はゲイなんです」と告白したわけではないが、こういう公の場に連れてくるのは、パートナーと相場が決まっている。これで、ああこの日本人の子は彼の「お友達」なんだな、と思うようなトンチンカンな人は社長になってはいけない。

 旦那の同僚で、去年ヘッドハンティング(?)で入社した男性もゲイで、彼氏がこれまた日本人で、けれどこの男性はどうみてもオカマちゃんなのに、しばらくの間「僕には一緒に住んでる彼女がいる」と言い張った。そしてこの日、堂々の『彼女』お披露目。これまた日本人オカマが登場したのだから、年明けからいきなりダブルパンチ、社長も少なからず招待したことを後悔したのではないだろうか。

 その他大勢の社員の皆様にも、これでバレバレになってしまった。一番気にしていた、直属の上司への紹介は、旦那も私もドキドキしていたが、すんなりと受け入れられてしまった。ちょっと拍子抜けしたところに、この上司の奥さんが現れ、聞くとこによると、以前、既に他の一社員から、「あの二人はゲイですぜ」とタレコミがあったと言う。そしてさらに聞けば、そのタレコミ屋は、会社にもう一人いる、ゲイだと言うのだから情けない。そんなことをばらして彼に何のメリットがあるというのか。

 余談ではあるが、このタレコミ野郎、私は数年前に、一緒に飯を食ったことがある。いや、ヤってはいない(ホントよっ!)。確か私のバースデーディナーか何かに、友人が連れてきたのだ。あんまり覚えてないけれど。さらにこの男、極度の潔癖症でドアのノブが触れない程らしい。であるから、会社にあるドアも当然自分で開けることが出来ず、ドア向こうに行きたい時は誰か他の人が来るまで、モジモジ待っているらしい。アホだ。手袋をすればいいんじゃない?とも思うが、もしかすると手袋さえも触れないのかもしれない。果たしてトイレの時はどうしているのか、ぜひ旦那に見てきて欲しいものである。

 さらにこの男、今はもう止めたらしいが、一時は会社に住んでたらしい。家賃が払えず家を追い出されたのか、何だか知らないが、とにかく住んでたようである。ある日、社員が休日出勤すると、オフィス内をパンツ一丁で彷徨う彼に遭遇したそうである。当然お風呂にも入れず、彼の周囲はいつも悪臭が漂っていたそうな。この男、かなりのツワモノと見た。

 話を戻すが、ここはオーストラリア、我らがシドニー、ゲイであることを誇りに思っていい国である。これで社長とも、上司とも、より打ち解けて仕事がやりやすくなるのではないだろうか。そう願う。私が原因で関係が気まずくなっては決してならない。私はこういう場面では、一歩身を引いて旦那を立てる努力をする、昔の日本の嫁のようになる。決して、一歩引くことによって、しなくてもいい会話から逃れようとしているわけではない(爆)。涙ぐましい内助の功。私って偉いな、って自分だけでも誉めてあげたくなる(嘘)。

 ところで、この社長の家、ノースシドニーの高台にそびえ立つ4階建てのピンクの豪邸であった。門にはその日の為に雇ったガードマンが二人立っていた。ワイン倉庫(勝手に入った)には、その日出してはくれなかった、高級シャンペン&高級ワインが数百本立ち並び、本気で盗もうかとさえ思わせた。タオルばかりが置いてある部屋もあった(これも勝手に入った)。部屋数は途中で数えるのが嫌になった。キッチンが私のお家くらいの大きさだった(泣けた)。数々の家具や装飾品の趣味は到底理解出来ないシロモノばかりであったが(というか趣味悪い)、バルコニーからの景色は壮大なものであった。180度に展開するハーバービュー。ブリッジはもちろん、3箇所で上がる花火を全て見ることが出来た。今までのシドニー生活で、一番すごい家を訪問したかもしれない。

 その夜、全ての来客に挨拶をして回る白髪の女性がいた。この豪邸の真の主(あるじ)であり、今では自宅にアトリエを持つ、一画家となったこの女性こそが、社長夫人である。全てを手に入れたかのごとく背筋をピンと立てて歩く彼女には、自信と気品が満ち溢れていた。涙ぐましい内助の功のタマモノね、と私はほくそ笑んだ。彼女は私のライバル(大嘘)。

2005年、皆様にとってステキな一年となりますように。
って長えな、おい。


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